いづ藤のよみものbook

世界最古の調味料『酢』

[発酵のお話]

日本各地で猛威を奮った台風19号で被災された皆様の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

今回は、『酢』を題材に発酵についてお伝えしたいと思います。

1.酢の歴史

酢というと日本人には身近な調味料ですが、世界でも「ビネガー」として愛されている調味料です。
世界での酢の歴史は、もっとも古くは紀元前5000年頃の古代バビロニアまで遡り、紀元前1100年頃の中国の周の文献に漢方薬として用いられたという文献も残っています。
酢が当時より、健康に良いとされてきた歴史は実に長いのです。

日本での酢の始まりは、4~5世紀頃の応神天皇の時代に、中国より米酢の醸造技術が現在の大阪あたりに伝わりました。そして、奈良時代になると、当時の貴族達は酢を“高級調味料”として使っていた事が、万葉集に書かれています。

現代のように庶民の食生活の調味として浸透したのは江戸時代で、1800年代になって、酢飯と生魚を使った「握り寿し」ができ、ご飯と混ぜるという酢飯の文化が生れ、酢が一般の食卓に普及しました。

酢は、日本やアジアでは、高級調味料だったり、漢方だったりと食との繋がりが多く、酒と共に造っていた歴史がある為、酢の歴史=酒の歴史とも言われています。

それに対して、ヨーロッパでは「酢の歴史=科学の歴史」と言われ、紀元前に酢は金属の酸化剤として使用され、更には、17世紀ルイ13世が大砲の冷却と錆止めとして使用しています。
また、中世ヨーロッパでペストが猛威を奮っていた時代に、酢は消毒剤として使用されていた歴史もあります。

酢以外の調味液で、日本とヨーロッパで使用目的も歴史がこれ程大きく異なるのは他の調味料にはないことです。
世界最古の歴史的調味料といわれる所以なのでしょうか。

2・酢の成り立ち

いったい酢はどうやって出来るのでしょうか?

酢は、酒が微生物に酢酸発酵して出来る発酵調味料で、世界各国で様々な酒と連動した酢が生産されています。

日本酒からは「米酢」
ワインからは「ワインビネガー」
ビールやウィスキーからは「モルトビネガー」

これらは菌の力を利用して出来た『醸造酢』という発酵調味料です。

これに対して『合成酢』という酢があります。
合成酢は、氷酢酸又は科学的に合成した酢液に、砂糖類、調味料、食塩等を加えたもので、これらに醸造酢を加えたものです。
本来の純粋な発酵調味料ではなく、砂糖類や食塩等が入っている為、合成酢の取りすぎには注意が必要です。

3.酢の栄養

酢の主成分は“酢酸”です。
酢酸には“抗菌作用”があり、食品の保存に重宝されてきました。
それ以外にも現在100種類を超える栄養成分が含まれ、健康にも効用がある事がわかっています。

生活習慣病の予防
糖尿病の予防
高血圧の予防
肥満の予防
疲労回復促進
食欲増進
消化吸収率の向上

数えきれない程の効能があり、“効能の宝庫”ともいうべきものなのです。

しかも、大さじ一杯の酢で効果があり、上流階級の調味料や薬だったのも納得です。

酢といえば、漬物にも欠かせません。
梅干しは酢で漬けると減塩になり、赤も鮮やかさを増します。
日本だけでなく、ピクルスなど海外版の漬物も種類豊富にあります。

このように世界中で愛され食されている『酢』のことを、私たちも今一度見直し、日頃の食事に取り入れていきたいものです。

 

最後に、発酵の勉強会で作った、発酵食のお料理をご紹介します。

☆「こっくり麻婆豆腐」
☆「きのこのマリネ」
☆「キャロットオレンジラぺ」
*今回のメニューには全て米酢が使用してあります。

季節の変わり目で食欲ない時にオススメです。

 

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